087 黒軸/Dark Pivot/Sangubashi
マンションリノベーション 専有面積 72.88㎡
宮脇檀によってかたちづくられた設計の骨格を継承しながら、空間に新たな秩序を与えるための最小限の編集を施した。
黒の質感が重心となり、回転する動きがその軸をかたちづくる──「黒軸」は、素材と構成の緊張感によって静かに立ち上がる。
玄昌石の床がもたらす重みと冷たさは、空間全体に静けさと密度をもたらし、踏みしめるたびに身体が場と呼応する。
視線と動線の交差点に置かれた回転扉は、構成に柔らかな可変性と動きを加え、空間に凛とした芯を通している。
既製品に頼らず職人の手で仕立てられた設えが、建築の骨格を引き立てながら、削ぎ落とすことで生まれる豊かさを静かに体現している。
撮影:刀祢平 喬